認知症の方は、違和感や痛みに敏感です。とくにお口のなかは刺激を察知する神経が多く集まっているため、介護をする方がうまく歯磨きができずに困っているケースは珍しくありません。お互いに安心してすすめられるよう、この機会に歯磨き方法のポイントを抑えておきましょう。
認知症の方の口腔ケアの特徴
認知症の方に口腔ケアを行う場合は、手順をシンプルにして理解しやすくすることが大切です。ご本人が混乱しないように1つ1つの説明と声かけを忘れないようにしましょう。
相手が痛がってうまく磨けなくなることを避けるために、歯ブラシは「柔らかめ」を使用します。歯磨き粉を使用する場合は、においや味がご本人にとって不快ではないかを先にチェックしておくといいでしょう。また、焦って磨くと痛みを感じたり気分が悪くなったりする可能性があります。優しく丁寧なケアを心がけてください。歯だけでなくお口全体をきれいに保つことが大切ですので、舌や歯ぐき、頬の裏側など粘膜もしっかりケアしましょう。
歯磨きの重要性
歯の根元に磨き残しがあると、歯周病の発症や悪化につながります。歯周病は認知症をはじめ脳卒中や心疾患、糖尿病、誤嚥性肺炎などのリスクを高めることが分かっており、全身疾患に罹患している場合は悪化の原因になるため注意が必要です。
認知症の方の歯磨きがなぜ難しいのか
認知症になると、理解力の低下や意欲の喪失、集中力の低下などの症状があらわれます。口腔ケアの目的がわからなくなったり、不安を抱いたりして、口腔ケアを嫌がるケースも少なくありません。「時間をかけすぎない」「こまめに声かけや説明をする」「ご本人が不快になることは避ける」この3点を忘れないようにしましょう。
認知症の方に適した歯磨き手順
認知症の方の場合、毎回同じようにできるとは限りません。ご本人の体調や状態に合わせながら、ゆっくりケアするようにしましょう。
①歯磨きを行うための声かけをする
②お口のなかを潤すために「ぶくぶくうがい」をする
③入れ歯をはめている場合は一度外してもらい、流水下で汚れを落とす
④舌ブラシやスポンジを使って粘膜についた汚れを除去する
⑤歯ブラシやデンタルフロス、歯間ブラシなどを使って汚れを除去する
⑥最後にもう一度うがいをして、歯磨きが終了したことをご本人にお伝えする
義歯の管理
入れ歯専用のブラシまたは歯ブラシを使って汚れを除去します。汚れが落ちやすくなるよう流水下で行ってください。その後、殺菌効果のある洗浄液につけると清潔な状態を維持しやすくなります。