2024年の診療報酬改定が6月1日に実施されました。診療報酬改定は2年に1回行われ、その時の社会情勢や、医療業界を取り巻く環境にあった診療報酬を設定するために行われます。また2024年は医療に加えて、介護や障害福祉のサービスの改定も重なるトリプル改定の年なので、医療・福祉業界を取り巻く環境が大きく変化します。この環境の変化に対応するために診療報酬改定のポイントを見ていきましょう。
2024年の診療報酬改定の基本認識
今回の診療報酬改定に向けて厚生労働省より以下の点が基本認識として示されています。
① 物価高騰・賃金上昇、経営の状況、人材確保の必要性、患者負担、保険料負担の影響を踏まえた対応
② 全世代型社会保障の実現や、医療・介護・障害福祉サービスの連携強化、進行感染症等への対応など医療を取り巻く課題への対応
③ 医療DXやイノベーションの推進等による質の高い医療の実現
④ 社会保障制度の安定性・持続可能性の確保、経済・財政との調和
これらの基本認識に基づき、近年の高齢化に伴い医療の需要が増加しており、それに対応するための医療分野における人材確保が困難であるという背景が浮き彫りになっています。加えて、働き方改革の進展により、人材育成の重要性が高まっています。また、現有の人材でいかに業務の生産性を向上させるかも重要な課題となっており、医療・介護・福祉の密接な連携によって無駄のない業務体制を整えることや、最新技術を活用した業務の効率化が求められています。
診療報酬改定のポイントを整理
ここからは診療報酬改定の重要ポイントを見ていきましょう。
外来医療の推進
まず一つ目の重要ポイントとして外来医療の推進が挙げられます。大きな病院に患者が集中して診療の効率が下がることがないように日頃の管理はかかりつけ医が行う「かかりつけ医機能」の推進が進められます。また生産性を上げるためにオンライン診療の推進も重要なポイントとなっています。
第8次医療計画への対応
第8次医療計画では救急患者のうち高齢者や特別なケアが必要な人を受け入れるために救急を担う医療機関の役割を明確化することが検討されています。
初期の救急を対応する医療機関が軽症患者の夜間・休日の外来診療を提供し、2次救急医療機関は高齢者救急の初期診療と入院治療を、3次救急医療機関では重症者に対してより専門的な治療を提供するといった役割分担を進めるのです。
診療報酬DX・医療DXの推進
2024年度は医療機関の電子カルテやレセコンの共通言語となるマスタと電子点数票の改善・提供が行われます。電子カルテの情報の共有が強化されます。また電子処方箋の普及も推進される計画となっています。これらの流れに早めに対応することは医療機関にとっては重要な課題となっています。
医師の働き方改革
働き方改革で重要なのが「時間外労働の上限規制」です。いままでこの規制は医師を対象になっていなかったのですが、2024年度から医師もこの規制を受けることになります。
医療従事者の勤務体制の柔軟化や、デジタルツールなどの活用による労働時間の短縮、医師の仕事内容の見直しなどがますます重要になります。
介護サービスとの連携
2024年の介護報酬改定でも医療との連携が強く打ち出されています。ケアの必要な高齢者に対応した入院医療や訪問看護、薬剤管理などに対応することが求められます。
地域包括ケアシステムの推進もより求められることとなります。
まとめ
今回は2024年の診療報酬改定についてポイントを解説しました。
高齢化による医療需要の逼迫をどのように乗り越えていくかが重要となってきていることを反映し、人材の育成や業務の効率化がより重要となってきています。
特に医療DXの推進が強く打ち出されており、電子処方箋の普及や電子カルテの情報共有サービスの構築に早期に対応していくことが非常に重要となります。