医師数増加の背景
厚生労働省は2020年末時点の医師・歯科医師・薬剤師統計を発表しました。この統計によれば、医師数は33万9623人と、過去最多を更新したということです。
過去40年で、国内における医師の数は2倍以上に増えたことも指摘されています。
この増加の背景には、医学部の定員が増えたことや、高齢の現役医師が増えていることが挙げられます。なお、女性医師も7万7546人と最多更新となっています。全体に占める割合も22.8%で、男女比を考えると8:2となり過去最高でした。
求人と医師不足
ところが、医師の求人自体は多く、医師不足が問題視されている現状があります。外来診療の求人情報が多いのが特徴です。とくに地方では、外来の医師不足が深刻化しています。多くの医師は都市部に集中し、地方での医師不足を招いているためです。都市部のほうが、質の高い最新の医療設備やキャリア形成に必要な環境が整っていることが要因と考えられます。
医師不足の要因
外来の医師が不足する要因には、日本では患者様が受診する医療機関を自由に選択できるフリーアクセスをとっていることも挙げられます。これに加えて、多くの医師が大学病院志向であることから、総合病院などにおいて医師数に対する患者数が多くなりすぎることも原因のひとつです。
そのほか、受診科目によっても医師数に偏りが見られます。
長時間勤務や変則的な勤務など労働環境が悪い、あるいは訴訟に発展しやすい診療科では医師不足が深刻です。主なものとしては、外科や小児科、救命救急などが挙げられます。さらに、若い医師は、「3ない科」と称される「癌がない」・「当直がない」・「救急がない」が揃った環境での勤務を望む人が多く、偏りが生じています。
このようなさまざまな背景から、日本では医師の数が増加しているにもかかわらず、医師不足が深刻化しています。とくに外来診療ではそれが顕著であり、超高齢社会の日本では課題解決が急務と考えられます。